痛苦と懸念と鬱陶しみと 『リフォームの爆発』町田康

読了。

冒頭から論考口調のマーチダさんが、現れました。

町田節はいつ読んでも楽しい。読み始めたらすぐに「そう、これこれ」と思います。

目にしたことのない旧式の言葉や言い回しや、どこまでがふざけてんのかと思わせる理論展開は、

ほぼ絶対真似したくなる。そしてうつります、ほぼ絶対劣化して。

 

基本描かれるリフォームが、現実に行われた案件のまま“実態・実情”なのがいい塩梅です。

また入れ代わり立ち代わり現れる職人のみなさんが、

マーチダさんの世界の登場人物として、ざっくりと容赦なく掘り下げられます。

ただそれぞれがまるで意に介さず、勝手にフル活動しているように見えるのは、

冷静な距離感と根底にある人間愛、でしょうか。

工務店のU羅くんを筆頭に、サッシを運んできたレゲエの若者二人組にはしびれました。

読むと「こういうひといるよね」といったあるあるレベルに収まらない、

「こういうひとに出くわすとちょっとね」という切実さが湧きあがってきます。

 

そして何より、茶出しをするマーチダさんが最高にチャーミングで、

真偽入り乱れながら生々しい絵が浮かんでしまうスリリングさもありました。

 

最後に岡崎さんが現れて、急展開。

わたしは残念ながら岡崎さんを忘れ去っていたので、冒頭に戻りましたよ。

これもまたループ、無限理論なんですね。

小さな疑問が残ったのは、リビングに新設した南向きの大開口サッシと天窓とトップライトについて。

冬温かくて快適な記述ですけれど、夏は大丈夫でしょうか。

相当暑いのでは……という感想を抱かせるのもまた余韻としてよし。